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SIHH2016見て歩き:A.ランゲ&ゾーネ 文・菅原 茂

 

SIHHの会場を歩いていて興味深いのものの一つに、各時計ブランドが毎年工夫を凝らすエントランスがある。ブースの外観は、サロンの統一感を重視した共通のデザインが採用されているが、エントランスのオープンスペースについては、新作の主要テーマに基づいて特別な演出がなされていて、それぞれ見応えがあるのだ。

 さて、こうしたエントランスの演出の点で秀逸なのが、ドイツ高級時計を代表するA.ランゲ&ゾーネ。毎年入口に鎮座するのは、新しい複雑時計の巨大なレプリカだ。直径2メートルにもなろうかという、その大きさに圧倒されるが、実際の時計の細部を忠実に再現する精巧な文字盤にはいつも驚かされる。「威風堂々」という言葉がまさにぴったりな、この時計オブジェを通じて、「今年のハイライトはこれだ!」と明確に主張しつつ、A.ランゲ&ゾーネの世界観へと誘うところがなんとも絶妙なのである。この衝撃的な光景に打たれた者は、是が非でも実際の時計を見てみたいとの衝動にかられるはずだ。

 今年の主役を務めるのは「ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン」だ。名称がすべてを語っているように、これは、A.ランゲ&ゾーネのアイコニックなクロノグラフ「ダトグラフ」に永久カレンダーとトゥールビヨンを統合した複雑時計である。個々の複雑機構自体は、特別目新しいものではないが、これまでA.ランゲ&ゾーネが複雑時計の開発で培ってきた高度な技術をこの1本の新作に集大成したといった印象である。その意味では、ブランドの自信と矜持が漲る超大作である。

 技術もさることながら、この新作のもっと注目すべきポイントは、バランス感覚が際立つ計算されたデザインにある。永久カレンダーの月表示とクロノグラフの30分積算計、永久カレンダーの曜日表示とスモールセコンド、それぞれをコンパクトに一体化して左右対称に配置し、縦方向では、アウトサイズデイトとムーンフェイズが上下一直線に並ぶ。これら付加機能の表示がメインの時刻表示を邪魔することなく、それゆえに文字盤が実にシンプルに見えるのだ。